遠眼鏡屋2

海洋熱塩循環の実態をもっと調べてみたら如何

メキシコ湾流は正確に言うと、大西洋の北半球部分を時計回りに流れる海流の一部分(暖流)の名称である。この海流のエンジンは偏西風と赤道を東から吹く貿易風である。風の力をかりるところから風成循環とも呼ぶそうだ。

ところが1980年代にある仮説が広く信じられるようになった。メキシコ湾流が北上し、グリーンランドアイスランドスカンジナビア半島の海域に至ると、その一部が海深く沈み込み、水深1000m以上の深層水となって、今度は大西洋を南下し、アフリカ南端の喜望峰を回って一部分はインド洋で海面に湧き上がり、再び喜望峰、大西洋を北上する一方、別の深層水は更に太平洋にまで脚を伸ばして、北太平洋で湧昇し、海面を通って、元きた道をもどって、メキシコ湾にまで到るというのであった。一説に往復2000年を要するとのことだ。

北大西洋で海流が沈み込む理由は、北上の途中で蒸発して塩分濃度が濃くなった海水が高緯度で冷やされ、氷結するとき塩分は排除されるからますます高密度の塩水となり、ついに海底にむかって沈み込むという。この沈み込みがエンジンとなって、海洋の熱と塩分の移送・混交が行われるところから、これを海洋熱塩循環と呼び、風成循環などと合わせて、海洋大循環と呼んだりするらしい(素人の説明では危ういから、適宜検索されたい)。

例のIPCCも第3次、第4次の報告書で熱塩循環の危険性を検討し、地球温暖化が極端に進行すると、北大西洋での融雪・融氷による塩分濃度の低下により高濃度塩水の沈み込みが停止し、地球寒冷期が到来することが考えられるが、21世紀中はその危険性は少ないと結論づけたようだ。IPCCにとっては、やはり人間活動による地球温暖化が危険の第一というのであろう。

しかし、管理人が考えるのに、1980年代からの温暖化というのも、案外この熱塩循環が主役となって引き起こした現象なのかも知れないと思うのだがどうであろうか。強力なエンジンに駆動されて、南の熱が北に運ばれ、西欧文明圏や北極海の気温上昇となる一方、水温ほぼ0度Cの深層水(塩分・養分に富む)はインド洋や太平洋で湧昇する際海域の熱い水温を調節し、同時に豊富な養分を海面に上昇させる。有名なエルニーニョラニーニャ現象にともなうアンチョビ漁の大漁・不漁なども、その湧昇の緩急に同期しているのではないか。

素人の妄想はこれくらいにして結論を書く。地球温暖化の原因の一つが人間活動に由来するのは間違いないと思うが、侮れない原因候補として熱塩循環が登場してきたと感じる。海の研究のさらなる前進に大いに期待したい。