遠眼鏡屋2

確実な果実

前回はインフレターゲット政策について、経済(景気)の状態が現在より相当程度改善し、失業者は減り、所得もあがり、企業も儲かる、一言でいえば経済の成長を回復できるのかという観点から考えた。その結果、かならずしも確実に「良い状態」が実現するとは言えない、それどころかスタグフレーションに陥る懸念があると判断した。

だが、「良い状態」をもっと限定的なものに絞って、たとえば企業・消費者・財政の借金漬けの程度を軽減できるかどうかで政策の良否判断を下すとしたらどうであろうか。つまり経済の回復成長が見られるかどうかはさて置き、国・企業・個人の債務の減少を第一義に考えるのである。

この観点にたつとインタゲ政策は実に直接に効果を発揮するように見える。たとえば国家財政を考えた場合、いま国債残高は700兆円、地方債等への債務保証が300兆円、合わせて1000兆円が国家の借金であるから、年2%のインフレならば黙っていても毎年20兆円分財政の実質負担は減少する。インフレが10年続くとすれば合計200兆円の空き枠が生じるから、これを国土強靭化に使ってもよいではないかとの考え方も可能となる。

勿論ここに書いた事柄が成立するのは、ほどよいインフレーションが起きた場合のみである。万一インフレが暴発し、その制御に手間取ったとしたら、どうなるか。消費、生産、投資といった実物経済は混乱をまぬかれない。だが、確実なことが一つある。国債はじめ世の中の債権の実質の価値はインフレの分減価する。憶測するなら、最悪の場合でも借財の重みが軽くなるという果実を手にできる予想にインタゲ派の人たちは魅了されているのかも知れない。

さて、上の段落ではインフレ暴発の場合を書いたのだが、それ以前にそもそも金融政策(含非伝統的金融政策)でインフレを起こすのは可能なのかという問題が残っている。

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