遠眼鏡屋2

米国でも右傾化が進行しているように見える

先日紹介した米ワシントンポストの日本の右傾化を指摘した記事については、ほぼ的を射ていると認めるところであるが、他面同紙は自国の政治的空気が漸次(ゼンジ)右方向に傾いているのに気づいているだろうか。

民主党オバマ大統領と共和党ロムニー候補による第1回目のテレビ討論会が行われた。テーマの経済政策の討論で一方的にロムニー候補が勝ちを占め、その後のアンケート調査ではロムニー氏の支持率がほぼオバマ氏に追いついたと報じられている。政権を担当して4年も経つのに依然として失業率は8%ほどの高水準にとどまっていることがオバマ不利の原因というのであろうが、もう一つ底流として同政権が力を尽くして成立させた健康保険の国民皆保険化が主として白人保守層の不興をかっていることを忘れてはならない。

50年ちかくも国民皆保険に慣れてきたわが国から見ると不思議なこの不興には、単に富者が自分の本来の所得(分け前)から無理やり取られることに対する反感と断じられないものがあるようだ。努力をして富者の仲間入りをするのも流れに流されて貧者に留まるのも本人の自由な選択だというのが平均的な白人保守層の人生哲学だと思う。彼らとてハンディキャップのある人たちへの特別な配慮にはやぶさかでないが、一般論として救済には限度があるべきで、限度を越えた国民皆保険などは即刻廃止すべきというのがティーパーティの主張であったと記憶する。

ロムニーさんは元来国民皆保険のアイデア州知事時代に実験的に実施した人らしいが、いまでは宗旨変えよろしくこうした保守伝統の底流を巧みにすくいとって、党内右派の若手ライアン氏を副大統領に指名した(この人は下院の予算委員長として、オバマ政権の繰り出す政策に圧力をかけ続けてきたようだ)。経済の状況が良ければこうした右傾化もよほど緩和されたであろうが、当面それは望み薄である。

といって、経済不調の原因を経済政策上の失敗に帰するのはオバマさんに気の毒な気がする。ギリシャもスペインもアイルランドも、そして20年まえからの日本もみな経済の不振に苦しんでいる。頼みの綱の中国もいよいよ好景気の終末が近づいたとの観測もある。これらはバラバラの現象ではないと以前から思っていた。折にふれてそんな関係のことを書いてみたいものである。